マージナルプリンス2の二次小説です
2009
「ここが##NAME1##とユウタのおうちなんですねー。
あっ! 奥に見えるのは、夢にまで見たタタミのお部屋じゃないですかっ!?」
「そうだけど、ちょ、ちょっと、シルヴァン!?」
ユウタが止める間もなく、シルヴァンは和室へ駆け出していた。
「これがタタミの香りなんですね! 僕、カンゲキですー!」
コロコロと和室に寝転がり、全身でイ草の匂いを感じていた。
日本で秋が深まった頃。
卒業生を含め、ウーティス寮のメンバー六人が、ユウタの家に集結した。
そうとは知らないユウタの姉は、現在、夕食の買い物に出掛けている。
短い連休に帰省した弟に手料理を振舞う為だ。
姉が帰ってきたら、六人は「おかえり」と日本語で出迎えて、驚かせる予定だ。
ターゲットを待つ間、ユウタは五人の友達を、家の中で一番広いリビングルームに通した。
ここは洋室で、正面に薄型テレビ、その傍にソファがある。
きっとここで家族団欒の光景が描かれるのだろうと想像できる、あたたかな雰囲気の部屋だった。
手前にある一人掛けのソファにユウタが座る。いつもはお父さんが座る席だ。
二人掛けのソファには、ジョシュアとアンリが腰を下ろした。
その向かい、同じく二人掛けのソファに、アルフレッド、シルヴァン、ハルヤの三人が少しキツそうに座った。
シルヴァンの好奇心旺盛な瞳はキラキラと輝いている。
「日本のおうちは可愛らしいですよね。僕、大好きです!」
「てか、狭くね?」
「もーレッド、そんなこと言っちゃダメですよ。これが日本のワサビなんです。ね、ハルヤ?」
「えっと、ワサビじゃなくて、ワビサビのこと言いたいのかな、シルヴァンは」
「あっ、間違えちゃいましたっ」
テヘッと笑う。
「日本の一般家庭としては、ユウタんちは広い方だと思うよ、一軒家だし」
「これで!? こんな天井低いのに!?」
「レッドの家と比べてるからだよ」
「そーなのか? あとさ、あのヘンな白いのってドアなのか? なんか薄いし、カギがないみたいに見えんだけど」
「うん。カギは付いてないよ。あれは障子だから」
「ショージ?」
「白い部分は和紙。要するに障子は紙でできたドア、かな」
「紙!? 破けたら終わりじゃん!」
「うん。まあ、そうだね。日本では、室内のドアにはカギがないことも多いんだ。
障子だけじゃなくて、普通のドアでもね」
「マジで言ってんのかよ!? カギないとか紙でできてるとか、セキュリティ甘過ぎだろ!?
でもさ、流石に##NAME1##の部屋にはカギ付いてるよな?」
「姉貴の部屋にも、俺の部屋にも付いてないよ」
「おいおい! どんだけノンキなんだよ、ジャパニーズは!
もし、##NAME1##が襲われたらどーすんだ!?」
ユウタは笑っている。
「平気だってば。日本は治安良いから」
「そうなんだ、いい国だね」
ジョショアは感心した様子だった。隣に居るアンリが思ったまま感想を述べる。
「成程ね。日本人が危機管理意識に欠けているのは、そのせいなのかな」
「え、そう?」とハルヤ。
「少なくとも、僕の知ってる日本人は三人とも、無闇に人を信じ易く、鈍感で、ぼーっとしているからね」
ハルヤが日本人的スマイルを見せる。
「俺達、ぼーっとしてるって思われてたんだ」
「ねえ。その三人の残りって、やっぱ俺と姉貴? 姉貴が鈍感なのは解るけど、俺はそこまで」
「お前もだよ」「君もだよ」
アルフレッドとアンリが同時に言ったので皆が吹き出した。
久々に揃ったメンバーを見ながら、ユウタはふと思う。
会えない時間があったにも関わらず、まるで昨日も寮で一緒だったみたいに話せてる。
それがユウタには嬉しくて、そのまま言葉にした。
「楽しいね」
皆がユウタを見る。
「レッドから、姉貴にナイショでうちに来たいって、聞いた時はビックリしたけど、
卒業したジョシュアとシルヴァンにも会えて嬉しいな。姉貴もきっと喜ぶよ」
アンリが隣に視線を流す。
「誘われるまま日本に来るなんて。よっぽど暇だったんだね、ジョシュア殿下?」
ジョシュアは柔らかく微笑した。
「アンリに噛み付かれるのも久し振りだね。今日は何て言われても許してしまいそうだな」
「ジョシュアのことは、俺達もテレビでチェックしてたんだぜ。な?」
アルフレッドに振られて、ハルヤが頷く。
「うん。この前の、馬術大会のとかね。ジョシュア、開会セレモニーで挨拶してたでしょ?」
「あ、うん」
ジョシュアは驚いたようだった。他の人より少しゆっくりしたペースでハルヤは話す。
「あの時のジョシュア、なんかすごくカッコ良かった。立派な王子様ってかんじで、
でも俺達の知ってるいつものジョシュアで、ほんと、すごいなあって思ったよ」
「俺から見てもイケてたぜ? 元がイイから、カメラ映りがイイのは当たり前だけどな!」
「ありがとう……なんだか照れくさいな、皆に見られてたなんて」
「そりゃ見るさ! 俺、マスコミって今まで良いイメージなかったけど、
離れたトコに住んでるお前の顔が、寮のサロンに座ってても見れるのは、
あのたくさんのカメラのおかげなんだなって初めて思ったっつーか、
まあ、ちょっとカンシャしたっつーか? ちょっとな」
ハリウッドスターのアルフレッド・ヴィスコンティが、ポリポリと鼻先を掻いている。
「んで、ジョシュア。王子様の暮らしはどーなのよ? ツライことはないか?
何でも聞いてやるから、俺達にぶっちゃけてみ? マスコミには言わねーからさっ」
赤い瞳は少し俯いた後、改めて友人達を見つめ、実は、と切り出した。
「まだ誰にも言っていないことがあるんだ。学院の皆にしか話せないことだから」
「おっ! そういうのを待ってたんだよ! 言ってみ言ってみ?」
「学院を卒業すると、月桂樹の森を懐かしく思うっていう話は本当だったよ」
「えっ?」
ドロドロした王室の内部事情が告白されると予想していたアルフレッドは拍子抜けした。
「ロレートの大公家には、昔から月桂樹の庭があるんだけど、
島にある木と同じものではないから、葉の色や香りが微妙に違うんだ。
だから本当に、聖アルフォンソ島の月桂樹が懐かしいよ。……カーディスもそう思ってるのかな」
最後は独り言のようだった。学院の生徒でなければ伝わらない話なので、
このささやかな感想を他の人に言ったことがなかった。
それがやっと話せて、胸のつかえが取れたような、すっきりとした気持ちになった。
「今度、カーディス陛下に聞いてみては? 貴方も学院の月桂樹が懐かしいですか、って」
同学年でひとつ年上のシルヴァンが微笑み掛ける。
「きっとジョシュアと同じように感じていると思いますよ?
彼も僕達と同じマージナルプリンスなんですから」
優しい菫色の瞳に見つめられて、ジョシュアは素直に頷いた。
「うん。そうだね。帰ったら、カーディスに聞いてみようかな」
琥珀の瞳は、心の奥まで伺うように緋色の瞳を覗いていた。
アルフレッドは隣の卒業生に尋ねる。
「シルヴァンは、どこで何してんのか解んなかったけど、元気だったのか?」
「はい、もちろん」
「なら良いけどさ」
「今回は本当に、卒業生の僕達にも声を掛けてくれて、ありがとうございます。
皆さんにまた会えて、僕、とっても嬉しいです。
あっ、明日は皆さんで一緒にアキハバラに行きません?
それから、ハルヤのお母様のお店に行って、本場のアボカドまぐろ丼を食べさせて貰うんですー♪
あとあと! サムライの街のニッコウとキョートとハコダテと、
あっ、それからフクオカに行ってウメガエモチをお土産に買いましょう!」
「よく知ってるね? 梅ヶ枝餅なんて」
「はい。ハルヤのお祖父様と同じ名前だったので」
梅ヶ枝餅とは福岡にある太宰府天満宮の名菓である。
太宰府は、かつて菅原道真が無実の罪によって流された場所だ。
梅ヶ枝餅の起源については諸説あるが、一説には道真を哀れんだ老婆が、
梅の枝を添えた餅を差し入れたことが、梅ヶ枝餅の始まりだと伝えられている。
「でも、函館から福岡の移動距離、結構遠いと思うけど」
「カイロからトーキョーまでの距離に比べれば、すぐそこですよ♪」
「シルヴァン、エジプトから来たの?」
「あっ、ええ、まあ。あの、あんまり言っちゃいけないことなんで、ご内密に」
本人以外の五人は、それぞれの顔をして、友人の表情を見つめる。
場が少し沈黙して、シルヴァンが困った笑顔を浮かべた。取り繕おうとして、何か言おうとした時。
「あの、さっきから、気になってたんだけど」
眼鏡の奥の瞳が、控えめに言った。
「シルヴァンさ、ちょっと痩せてない?」
「え? そうですか?」
「あ、やっぱそうだよな!? 俺も言おうと思ってたんだよ!」
力強くアルフレッドが同意する。
「ガッコに居た時より、確実に細くなってるぞ、お前!」
「自分では気付きませんでしたが、レッドとハルヤに言われるということは、そうなんでしょうねえ」
「そうなんでしょうねえ、じゃねえよ! ったく、元々痩せてんのに。きっとココも」
人差し指で。腹筋の中央をなぞる。はっきりと溝ができていた。
「やっぱ、前よりくっきり割れてんじゃねーか。どんだけ筋トレしてんだよ、お前」
「止めて下さいよっ。僕、ソコ弱いんですからっ」
「知ってるっつの」
両手でシルヴァンの脇腹をくすぐる。
「やっ、レッド、ダメですってば、あははっ」
じゃれあう二人を、他の四人はそれぞれの顔をして見守っていた。
「あ、そうだ。ユウタ、ご両親は二階かい?」
ジョショアの言葉に視線が集まる。
「それとも出掛けているのかな? あとでも良いんだけど、迷惑でなければご挨拶させて欲しいな」
「えっ、ジョシュアがうちの親に?」
「うん。俺達、##NAME1##とユウタには本当に感謝し切れないほどお世話になってきたし、
君達姉弟のご両親はどんな人なのかなって、実はずっと気になってて」
「あっ! 俺も見たい見たい! 子どもと激似なんだろうけどっ!」
「##NAME1##のご両親にご挨拶? 僕もしたいですー!」
すぐさま、アルフレッドとシルヴァンが賛成した。
「あ、ごめん。今日と明日は居ないんだ。温泉旅行中なんだよ、二人でね」
「わお! ユウタのパパさんとママさん、ラブラブなんですね♪」
「別に、そんなんじゃないんだけど」
身内を褒められると謙遜して否定する。ユウタは日本人特有のリアクションを見せた後、事情を説明した。
「あのね、父さんと母さんには、みんながうちに来ること話したんだよ。
そしたら急に私達は温泉に行ってくるから、みんなで仲良くね、って」
「えっ!? じゃあ俺達、今夜は##NAME1##と同じ部屋で眠ってイイってことかよ!?」
「や。俺達は、姉貴とは別の部屋で雑魚寝だよ?」
「なんだー、ムダな期待させんなよー」
「##NAME1##のオフトンで眠っていいのかなーって、ちょっと期待しちゃいました♪」
「だ、ダメだよ! てゆうか姉貴は布団じゃなくてベッドだし」
「シルヴァン! お前はキケンだから外で寝てろ、外で!」
「えー。イヤですー!」
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あっ! 奥に見えるのは、夢にまで見たタタミのお部屋じゃないですかっ!?」
「そうだけど、ちょ、ちょっと、シルヴァン!?」
ユウタが止める間もなく、シルヴァンは和室へ駆け出していた。
「これがタタミの香りなんですね! 僕、カンゲキですー!」
コロコロと和室に寝転がり、全身でイ草の匂いを感じていた。
日本で秋が深まった頃。
卒業生を含め、ウーティス寮のメンバー六人が、ユウタの家に集結した。
そうとは知らないユウタの姉は、現在、夕食の買い物に出掛けている。
短い連休に帰省した弟に手料理を振舞う為だ。
姉が帰ってきたら、六人は「おかえり」と日本語で出迎えて、驚かせる予定だ。
ターゲットを待つ間、ユウタは五人の友達を、家の中で一番広いリビングルームに通した。
ここは洋室で、正面に薄型テレビ、その傍にソファがある。
きっとここで家族団欒の光景が描かれるのだろうと想像できる、あたたかな雰囲気の部屋だった。
手前にある一人掛けのソファにユウタが座る。いつもはお父さんが座る席だ。
二人掛けのソファには、ジョシュアとアンリが腰を下ろした。
その向かい、同じく二人掛けのソファに、アルフレッド、シルヴァン、ハルヤの三人が少しキツそうに座った。
シルヴァンの好奇心旺盛な瞳はキラキラと輝いている。
「日本のおうちは可愛らしいですよね。僕、大好きです!」
「てか、狭くね?」
「もーレッド、そんなこと言っちゃダメですよ。これが日本のワサビなんです。ね、ハルヤ?」
「えっと、ワサビじゃなくて、ワビサビのこと言いたいのかな、シルヴァンは」
「あっ、間違えちゃいましたっ」
テヘッと笑う。
「日本の一般家庭としては、ユウタんちは広い方だと思うよ、一軒家だし」
「これで!? こんな天井低いのに!?」
「レッドの家と比べてるからだよ」
「そーなのか? あとさ、あのヘンな白いのってドアなのか? なんか薄いし、カギがないみたいに見えんだけど」
「うん。カギは付いてないよ。あれは障子だから」
「ショージ?」
「白い部分は和紙。要するに障子は紙でできたドア、かな」
「紙!? 破けたら終わりじゃん!」
「うん。まあ、そうだね。日本では、室内のドアにはカギがないことも多いんだ。
障子だけじゃなくて、普通のドアでもね」
「マジで言ってんのかよ!? カギないとか紙でできてるとか、セキュリティ甘過ぎだろ!?
でもさ、流石に##NAME1##の部屋にはカギ付いてるよな?」
「姉貴の部屋にも、俺の部屋にも付いてないよ」
「おいおい! どんだけノンキなんだよ、ジャパニーズは!
もし、##NAME1##が襲われたらどーすんだ!?」
ユウタは笑っている。
「平気だってば。日本は治安良いから」
「そうなんだ、いい国だね」
ジョショアは感心した様子だった。隣に居るアンリが思ったまま感想を述べる。
「成程ね。日本人が危機管理意識に欠けているのは、そのせいなのかな」
「え、そう?」とハルヤ。
「少なくとも、僕の知ってる日本人は三人とも、無闇に人を信じ易く、鈍感で、ぼーっとしているからね」
ハルヤが日本人的スマイルを見せる。
「俺達、ぼーっとしてるって思われてたんだ」
「ねえ。その三人の残りって、やっぱ俺と姉貴? 姉貴が鈍感なのは解るけど、俺はそこまで」
「お前もだよ」「君もだよ」
アルフレッドとアンリが同時に言ったので皆が吹き出した。
久々に揃ったメンバーを見ながら、ユウタはふと思う。
会えない時間があったにも関わらず、まるで昨日も寮で一緒だったみたいに話せてる。
それがユウタには嬉しくて、そのまま言葉にした。
「楽しいね」
皆がユウタを見る。
「レッドから、姉貴にナイショでうちに来たいって、聞いた時はビックリしたけど、
卒業したジョシュアとシルヴァンにも会えて嬉しいな。姉貴もきっと喜ぶよ」
アンリが隣に視線を流す。
「誘われるまま日本に来るなんて。よっぽど暇だったんだね、ジョシュア殿下?」
ジョシュアは柔らかく微笑した。
「アンリに噛み付かれるのも久し振りだね。今日は何て言われても許してしまいそうだな」
「ジョシュアのことは、俺達もテレビでチェックしてたんだぜ。な?」
アルフレッドに振られて、ハルヤが頷く。
「うん。この前の、馬術大会のとかね。ジョシュア、開会セレモニーで挨拶してたでしょ?」
「あ、うん」
ジョシュアは驚いたようだった。他の人より少しゆっくりしたペースでハルヤは話す。
「あの時のジョシュア、なんかすごくカッコ良かった。立派な王子様ってかんじで、
でも俺達の知ってるいつものジョシュアで、ほんと、すごいなあって思ったよ」
「俺から見てもイケてたぜ? 元がイイから、カメラ映りがイイのは当たり前だけどな!」
「ありがとう……なんだか照れくさいな、皆に見られてたなんて」
「そりゃ見るさ! 俺、マスコミって今まで良いイメージなかったけど、
離れたトコに住んでるお前の顔が、寮のサロンに座ってても見れるのは、
あのたくさんのカメラのおかげなんだなって初めて思ったっつーか、
まあ、ちょっとカンシャしたっつーか? ちょっとな」
ハリウッドスターのアルフレッド・ヴィスコンティが、ポリポリと鼻先を掻いている。
「んで、ジョシュア。王子様の暮らしはどーなのよ? ツライことはないか?
何でも聞いてやるから、俺達にぶっちゃけてみ? マスコミには言わねーからさっ」
赤い瞳は少し俯いた後、改めて友人達を見つめ、実は、と切り出した。
「まだ誰にも言っていないことがあるんだ。学院の皆にしか話せないことだから」
「おっ! そういうのを待ってたんだよ! 言ってみ言ってみ?」
「学院を卒業すると、月桂樹の森を懐かしく思うっていう話は本当だったよ」
「えっ?」
ドロドロした王室の内部事情が告白されると予想していたアルフレッドは拍子抜けした。
「ロレートの大公家には、昔から月桂樹の庭があるんだけど、
島にある木と同じものではないから、葉の色や香りが微妙に違うんだ。
だから本当に、聖アルフォンソ島の月桂樹が懐かしいよ。……カーディスもそう思ってるのかな」
最後は独り言のようだった。学院の生徒でなければ伝わらない話なので、
このささやかな感想を他の人に言ったことがなかった。
それがやっと話せて、胸のつかえが取れたような、すっきりとした気持ちになった。
「今度、カーディス陛下に聞いてみては? 貴方も学院の月桂樹が懐かしいですか、って」
同学年でひとつ年上のシルヴァンが微笑み掛ける。
「きっとジョシュアと同じように感じていると思いますよ?
彼も僕達と同じマージナルプリンスなんですから」
優しい菫色の瞳に見つめられて、ジョシュアは素直に頷いた。
「うん。そうだね。帰ったら、カーディスに聞いてみようかな」
琥珀の瞳は、心の奥まで伺うように緋色の瞳を覗いていた。
アルフレッドは隣の卒業生に尋ねる。
「シルヴァンは、どこで何してんのか解んなかったけど、元気だったのか?」
「はい、もちろん」
「なら良いけどさ」
「今回は本当に、卒業生の僕達にも声を掛けてくれて、ありがとうございます。
皆さんにまた会えて、僕、とっても嬉しいです。
あっ、明日は皆さんで一緒にアキハバラに行きません?
それから、ハルヤのお母様のお店に行って、本場のアボカドまぐろ丼を食べさせて貰うんですー♪
あとあと! サムライの街のニッコウとキョートとハコダテと、
あっ、それからフクオカに行ってウメガエモチをお土産に買いましょう!」
「よく知ってるね? 梅ヶ枝餅なんて」
「はい。ハルヤのお祖父様と同じ名前だったので」
梅ヶ枝餅とは福岡にある太宰府天満宮の名菓である。
太宰府は、かつて菅原道真が無実の罪によって流された場所だ。
梅ヶ枝餅の起源については諸説あるが、一説には道真を哀れんだ老婆が、
梅の枝を添えた餅を差し入れたことが、梅ヶ枝餅の始まりだと伝えられている。
「でも、函館から福岡の移動距離、結構遠いと思うけど」
「カイロからトーキョーまでの距離に比べれば、すぐそこですよ♪」
「シルヴァン、エジプトから来たの?」
「あっ、ええ、まあ。あの、あんまり言っちゃいけないことなんで、ご内密に」
本人以外の五人は、それぞれの顔をして、友人の表情を見つめる。
場が少し沈黙して、シルヴァンが困った笑顔を浮かべた。取り繕おうとして、何か言おうとした時。
「あの、さっきから、気になってたんだけど」
眼鏡の奥の瞳が、控えめに言った。
「シルヴァンさ、ちょっと痩せてない?」
「え? そうですか?」
「あ、やっぱそうだよな!? 俺も言おうと思ってたんだよ!」
力強くアルフレッドが同意する。
「ガッコに居た時より、確実に細くなってるぞ、お前!」
「自分では気付きませんでしたが、レッドとハルヤに言われるということは、そうなんでしょうねえ」
「そうなんでしょうねえ、じゃねえよ! ったく、元々痩せてんのに。きっとココも」
人差し指で。腹筋の中央をなぞる。はっきりと溝ができていた。
「やっぱ、前よりくっきり割れてんじゃねーか。どんだけ筋トレしてんだよ、お前」
「止めて下さいよっ。僕、ソコ弱いんですからっ」
「知ってるっつの」
両手でシルヴァンの脇腹をくすぐる。
「やっ、レッド、ダメですってば、あははっ」
じゃれあう二人を、他の四人はそれぞれの顔をして見守っていた。
「あ、そうだ。ユウタ、ご両親は二階かい?」
ジョショアの言葉に視線が集まる。
「それとも出掛けているのかな? あとでも良いんだけど、迷惑でなければご挨拶させて欲しいな」
「えっ、ジョシュアがうちの親に?」
「うん。俺達、##NAME1##とユウタには本当に感謝し切れないほどお世話になってきたし、
君達姉弟のご両親はどんな人なのかなって、実はずっと気になってて」
「あっ! 俺も見たい見たい! 子どもと激似なんだろうけどっ!」
「##NAME1##のご両親にご挨拶? 僕もしたいですー!」
すぐさま、アルフレッドとシルヴァンが賛成した。
「あ、ごめん。今日と明日は居ないんだ。温泉旅行中なんだよ、二人でね」
「わお! ユウタのパパさんとママさん、ラブラブなんですね♪」
「別に、そんなんじゃないんだけど」
身内を褒められると謙遜して否定する。ユウタは日本人特有のリアクションを見せた後、事情を説明した。
「あのね、父さんと母さんには、みんながうちに来ること話したんだよ。
そしたら急に私達は温泉に行ってくるから、みんなで仲良くね、って」
「えっ!? じゃあ俺達、今夜は##NAME1##と同じ部屋で眠ってイイってことかよ!?」
「や。俺達は、姉貴とは別の部屋で雑魚寝だよ?」
「なんだー、ムダな期待させんなよー」
「##NAME1##のオフトンで眠っていいのかなーって、ちょっと期待しちゃいました♪」
「だ、ダメだよ! てゆうか姉貴は布団じゃなくてベッドだし」
「シルヴァン! お前はキケンだから外で寝てろ、外で!」
「えー。イヤですー!」
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